いつか朝日が昇るまで

子育て、受験、日々考えたことなどを紹介するブログです。みなさんの気楽な子育て,中学受験を応援します。

ホームレスに励まされたこと

f:id:gerge0725:20140707092554j:plain

 

大学時代,友達と飲んでいて終電がなくなって新宿で一夜を過ごすことになった。当時は学生だったので朝まで店にいる余裕もなく,路上で一夜を過ごすことにした。夏だったので,外で一夜を過ごすのもそれほど悪いものではなかった。

 

そんなとき,あるホームレスの方が「兄ちゃんたち,どうしたの」と声をかけてくれた。「いやあ,終電が無くなったんです」と答えたら,「段ボール貸してあげるよ」と言われ,段ボールを下に引いてそこにみんなで座って一夜を過ごすことにした。

 

当時は大学生。いろいろな悩みを抱え,将来に不安を抱いていた。そんな話をホームレスの方に話したら,「おい,若者が将来に絶望しているぞ」と仲間を呼んでくれ,話を聞いてくれ,「頑張れ」と励ましてくれた。

 

そこに集まってきたホームレスの人は仕事を失い,東京なら仕事があると田舎から出てきた人たちだった。私は「むしろ埼玉とかの方が仕事があるんじゃないですか?」と言ったら,「そうかなあ」と言っていたが,おそらくその後も新宿に留まり続ける感じだった。

 

多くのホームレスの方が集まってくれ,「俺は警察署の隣に住んでいるよ」「俺は富士銀行の前に住んでいるからいつでも来てくれ」と言って,段ボールはそのまま貸してくれて,みんなその場を去っていった。その後,私たちはそのダンボールに座り続けた。そこから見える風景は今までとは異質のもので,全く違ったものだった。ほとんど誰も私たちに気づいていないようだ。いや,気づいても気づかないふりをしているだけかもしれない。

 

当時地下鉄サリン事件があった後で,人がたくさん倒れているのに,通勤客は声をかける人は少なく,日常と非日常が入り混じった異常な光景だったのだが,それが実感としてよく分かった気がした。

 

そんな中,一人だけ声をかけてくれた人は「君たちいつからこんなことしてるの?若いのに。」だった。若者が段ボールに座っているのが珍しく映ったようだった。でも,声をかけてきたのはその人だけだった。自分たちが人間ではなく,ただの石ころのように思えた瞬間だった。

 

翌朝,私たちは借りた段ボールを富士銀行の前にいるおじさんに返して,再びいつもの日常に戻ることになった。ただその後もこの出来事は忘れることができない経験である。

 

日本のホームレスは自己主張しない。こうなったのは自分の責任だと思っている人が多いのだろうか。いつもひっそりと暮らしている印象である。

 

アメリカで会ったホームレスは「Change money!!」と叫んでいたので,両替をしたいのかと思って話しかけたら,「俺たちはホームレスだから金をくれ」とはっきり言われた。日本ではそんなことは言われたことはない。日本の場合は何かを主張するようなことはないので,これがアメリカなのかと思ったものである。

 

インドに行ったときはお金を寄付しなかったら背中を叩かれた。日本人なんだからお金を寄付するのは当然だと思われたのかもしれない。こういうことも日本ではないだろう。

 

私たちもいつそういう立場になるか分からないという意識と同時に,そういう立場の人たちの失敗の上に自分は成功を築いていないか。そんな風に思ってしまうこともある。また,世の中には声を上げられず,苦しんでいる人たちがいるということを自分は見ないようにしていないか。だから自分を振り返る作業をこの話を思い出すたびにすることにしている。

 

あの時会ったホームレスの皆さんは何をしているだろうか。自分は今,元気に生きているが彼らのために何かができているわけではない。今後,私は彼らのような人たちのために何ができるのだろうか。その答えはまだ出ていない。

 

 

ルポ 若者ホームレス (ちくま新書)

ルポ 若者ホームレス (ちくま新書)