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いつか朝日が昇るまで

子育て、受験、日々考えたことなどを紹介するブログです。みなさんの気楽な子育て,中学受験を応援します。

なぜ非常勤の待遇が悪いと分かっているのにそれまでに手を打たなかったのか

研究 考え方

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以下の記事を読みました。私自身も研究に従事しているので,非常勤で生活することの困難さも理解できるし,奨学金の返済地獄に陥っている人も知っています。ただしそれは事前に分かっていたことです。大学院の博士課程に進学するときに「研究者として生きていくことの困難さ」については散々教えられたはずですし,奨学金は借金であるという認識は持っていたでしょう。ですから非常勤だけで食えないのなら,他に食える道を見つけておくという発想になぜならないのかがとても不思議だったのです。

大学非常勤講師の三重苦=奨学金ローン地獄・高学歴ワーキングプア・人間破壊と生命の危機(井上伸) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

まず上記記事の待遇について書かれている部分を引用してみましょう。

 

 また非常勤講師の基本的な給与は、一般に90分の授業を1コマと言いますが、1コマ当たり月2万5,000円が平均です。年間だと1コマ当たり30万円ということになります。だから年収300万円を稼ぎ出すとすると、10コマ程度は必要になる。授業は90分でも、直前直後の準備もありますから、1コマ当たり2時間労働と考えられています。そうすると、今、日本の労働基準法では上限は40時間ということになっていますから、10コマやって20時間で300万円程度にしかならない。ギリギリ全部のコマを持ったとしても600万円という、非常に苦しい状況ですね。ちなみに大学の授業の90分というのは学部によって中身に違いがあって、語学は学生に話をさせたり小テストをやらせたりするということで教員はしゃべらない時間もいっぱいありますが、少なくとも法学のような社会科学系の授業では90分ずっと先生が話し続けるということも珍しくない。そうすると、2時間労働というのは結構な重労働で、週10コマでもヘトヘトになります。また、非常勤講師というのは、採用される際に業歴が必要で、大抵の場合は研究歴ですから、研究のための論文を書いたり本を読んだり学会で発表したりすることも必要です。そうすると、やはり研究者ですから教育時間と同じくらい研究時間も欲しい。となると、10コマやって、かつ研究時間も確保してというのは、大変難しい状況です。

 

1コマあたり月2万5千円として労働時間を2時間とし,月4コマで8時間。時給換算すると3千円ぐらい。月5コマだと10時間で時給2500円ぐらいです。この待遇が悪いといえるのでしょうか。私が塾でやっている時給などは基本的に授業準備の時間など時給に換算しません。だから,時給という意味ではこれより低くなります。だからこの待遇そのものが悪いとは言えませんし,そもそもこの待遇で悪いというのであれば他のバイトをすれば良いという話になります。もちろんこれが専任教員のとの比較であればかなりの格差が存在するという話にはなりますが,専任の場合,授業以外の時間もかなりあると思いますよ。

 

また「研究時間も教育時間も同じように」とあるのですが,これって専任でも実現できないのではないですか?私の周りの専任の先生はそう見えるのですが…。ですから非常勤,専任関係なく「研究時間をどう確保するか」というのが問題になっているのは同じです。

 

私のある先輩は50歳で専任になったのですが,その方の言葉が全てを表しています。その先輩は非常勤や予備校で50歳まで生活費を稼いでいました。その時に専任の先生から言われたのは「あなたは非常勤だから論文書く時間があるんだね」でした。ところが50歳をすぎて専任になり言われたのは「あなたは専任だから論文を書く時間があるんだね」だったのです。つまりどういう待遇になろうと研究を継続できるのであり,そのためには生き抜くことが大切だということです。

 

私の先輩はそういう危機感を持って生きていて,50歳で専任になっており,私もそういう環境で育ってきたので,ここで出てくるような非常勤の方たちがなぜ危機感を持って生きるすべを身につけておかなかったのかよく分かりませんでした。その理由は以下のように書かれています。

 

また、この業界でなぜ仕事を続けているのか、転職しないのか? とよく聞かれますが、まず大学の研究者になるためには普通の人よりもスタートラインが遅くなります。大学院を卒業しないとそのチャンスはほぼないわけですから、ドクターまでノンストップで行っても28歳です。そこからスタートなので、30代前半で専任教員になれなくても構わないというか、別に落ちこぼれだとは誰も思いません。その期間は楽しく研究ができる。だけど40代になるとさすがに危ないかなと思い始め、45歳を超えるともう無理だろうと思う。しかし45歳で一体どこの業界に転職できるのか。何のキャリアもない45歳のおじさん、おばさんが、どこに行けますか? それを考えたら、もうそのままの道を歩むしかないわけです。確かに好きだからやれているし、好きでなければとっくの昔に転職していますが、やりがいがあるかと聞かれると、ある日突然切られてしまうので何とも言い難いものがあります。それは自己満足でのやりがいでしかなくて、一歩外に出れば、非常勤講師というのは何のキャリアにもなっていませんから、10年間大学で教えていても、教員としてのキャリアとしてすら認めてもらえない。そこは非正規雇用全体の問題だと思います。そして、キャリアがないわけですから、転職の時の材料にもならないわけですね。

 

こういう現状認識です。どこの業界でもいきなり45歳で無職から職を得るのは難しいでしょう。であれば最初から生存戦略をしっかりと持つ必要がありますよね?40代になってから焦るというのは現状認識が甘いといわれても仕方がありません。

 

生きていれば研究できる

もし本当に研究を続けたいというのであれば,まず生き抜くことが大切です。そうすれば研究は死ぬまで継続できます。ただし分野によっては施設がなければ研究できない分野もあります(理系)。だから生存戦略を図りつつ,自分が継続して研究できる分野を選択することが重要でしょう。私は研究の時間は無理やり作り出して生活をしています。確かに思い通りに研究はできていませんが,私は生きているし,結婚もでき子ども持てました(先ほどの先輩は子どもが三人いて一人は大学院まで行かせました)。

 

研究者であれば勉強というのはしてきたわけですから,塾業界ではアルバイトをすることは可能ですし,塾業界というのは年数に応じて時給があがり,評価も上がります。その部分は専任と時間講師の差はありません。

 

そうやってしっかりと働いていけば評価もしてもらえますし,別の仕事があることもあります。幸いにも(?)3年以内の離職率が高い業界ですので,いろいろな人に出会えることがあります。今の私はそういう人たちに助けてもらって生きています。それは運が良かっただけかもしれません。しかし,研究だけしていたらそういう出会いはなかったでしょう。

 

最後に

研究職を目指すというのは決して平たんな道のりではありませんし,専任になれば研究時間が取れるという訳でもありません。それでもなお研究を続けたいのなら,生存戦略を確立しつつ研究を続けていかねばなりません。私の周りにもそういう苦しみを持っている人はいます。一方私は博士課程も奨学金を借りずに働きながら単位取得退学しました。だから借金はありません。さらに生存戦略も確保できました。生きていれば研究ができるのですよ。

 

 

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